サステナビリティ

環境・エネルギー部会

H.U.グループは、重要課題として認識する気候変動と循環型社会をはじめ、深刻化する様々な地球環境問題に対して、「環境方針」のもと、GHGの削減および効率性の改善や廃棄物の削減など、環境負荷の軽減と業務効率の向上に取り組んでいきます。

2019年7月5日制定
2024年3月7日改定

H.U.グループは、多様な事業特性において環境との関わりを認識し、環境保全に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献します。

  • 環境に配慮した事業活動を目指し、人と環境に優しいサービスや製品を社会に提供します。
  • 省エネ・省資源、温室効果ガス排出量削減、化学物質の適正管理、廃棄物の削減、リサイクルの推進、水資源の保護、生物多様性の保全に取り組み、環境負荷の低減に努めます。
  • 環境に関する法規制・協定を遵守するとともに、環境マネジメントシステムや環境パフォーマンスの継続的な改善に努めます。
  • 環境方針を含む環境の取り組みについて、グループの従業員及び事業活動に関わる全ての人に周知するとともに社外にも開示します。

H.U.グループホールディングスの総務本部長を責任者とする環境・エネルギー部会を設置し、環境マネジメントシステム(EMS)を構築し、気候変動、廃棄物などの環境活動に関する計画を策定、実行しています。それらの活動計画や成果については定期的に進捗を把握し、今後の対応や是正活動に努めていきます。受託臨床検査事業、臨床検査薬事業を行う主要拠点においてはISO14001(※)の認証を取得するとともに、事業所および事業活動の環境影響を把握し、環境負荷低減を推進しています。

対外的に掲げる目標設定、外部イニシアティブへの加入などは代表執行役社長が委員長を務めるH.U.グループ サステナビリティ委員会で審議されます。事案によって取締役へ報告しています。

  • ISO14001:
    ISO(International Organization for Standardization, 国際標準化機構)が定めた環境マネジメントシステム(EMS:Environmental Management Systems)に関する規格。環境に配慮し、環境負荷を継続的に減らすシステムを構築した組織に認証を与えるというもの。

環境・エネルギー領域の推進体制

H.U.グループは、パリ協定および大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを踏まえ、環境領域のマテリアリティとして「気候変動」と「循環型社会」を特定し、2050年に「CO2排出量ネットゼロ」および「廃プラスチックのリサイクル率100%」の長期目標を策定しています。加えて、2025年と2030年での中期目標を定めるとともに、直近年度におけるKPIとしてサステナビリティ・ロードマップを設定し、進捗管理を行っています。
2023年度では、パリ協定が求める水準と整合を図るため、従来の目標を上方修正しました。

環境領域の長期目標

2023年度より新たなロードマップ(2カ年)を設定し取り組んでいます。

<2カ年目標 (2023~2024年度)>

KPI 【参考】実績値 2023年度 2024年度
大項目 中項目 小項目 単位 2021年度 2022年度 目標 実績 目標
気候変動
対策
CO2の削減 総排出量 Scope
1+2
千t-CO2 44.0 48.5 40.3 41.4 38.5
% (基準年) +10.2 -8.4 -5.9 -12.6
Scope3 千t-CO2 373.6 334.0 354.9 264.1 345.6
% (基準年) +11.5 -5.0 -29.3 -7.5
海洋
プラスチック
ごみ対策
(循環型
社会の形成)
資源の循環的・
効率的な利用
廃プラスチックの
リサイクル率
%
(リサイクル量/総量)
75.7 85.7 79.0 85.1 82.0

* 2021年度より第三者検証に基づき算出

【対象範囲】
日本・海外のグループ会社

H.U.グループでは、H.U.グループ環境方針の下、全社的にEMSを推進しています。当社および株式会社エスアールエル セントラルラボラトリー、富士レビオ株式会社の各事業所では、ISO14001の要求事項に則り、体制を整備しています。

客観性や独立性を確保するために、H.U.グループ環境・エネルギー部会事務局が中心となり、グループ内で資格要件を満たして任命された内部環境監査員が内部監査を実施しています。

2020年度より、H.U.グループホールディングスが認証保有会社となり、第三者認証機関(テュフズードジャパン)によるISO14001認証審査を受け認証を維持しています。

外部審査の実施状況

ISO14001 適用範囲
認証サイト 適用範囲
H.U.グループホールディングス株式会社 本社 受託臨床検査業務における管理、測定装置、測定試薬の設計開発及び製造、免疫測定装置用の測定試薬用素材の製造における管理
株式会社エスアールエル セントラルラボラトリー 受託臨床検査業務
富士レビオ株式会社
八王子事業所、八王子第3工場
測定装置、測定試薬の設計開発及び製造
富士レビオ株式会社 相模原工場 測定試薬の製造
富士レビオ株式会社 十勝帯広工場 免疫測定装置用の測定試薬用素材の製造
富士レビオ株式会社 宇部工場 測定試薬及び免疫測定装置用の測定試薬用素材の製造
富士レビオ株式会社 旭川工場 測定試薬の製造

従業員および契約社員、請負業者などビジネスパートナーに適用

H.U.グループでは、直近5カ年において、環境に関する法規制違反(水質・水量の規制含む)や環境に影響を与える重大事故等は発生しておりません。

監査実施数や法規制違反件数など、上記に関する具体的なデータはこちらをご参照ください。

H.U.グループでは、気候変動を重要課題と捉え、環境長期目標を策定し、「2050年までにCO2排出量ネットゼロ」を目標に取り組んでいます。あらゆる温室効果ガスの中でもCO2をメインターゲットとし、排出量の削減に向けて以下の省エネルギー対策を継続的に推進しています。

<Scope1>
株式会社メディパルホールディングスとの業務提携により、検体の集荷と医薬品の物流ネットワークを融合させ、物流機能の最適化を図り、車両台数を削減することで、排気ガス・二酸化炭素の排出量削減を推進しています。また、EV,FCVなど非化石燃料車両への切替検討も併せて進めています。

<Scope2>
「高効率設備の導入」、「LED照明の変更」、「ラボ体制の再構築」や「事業所の統廃合」などの省エネルギー活動および再生可能エネルギーの調達を実施しています。

<Scope3>
臨床検査薬事業の製品について、包装材におけるプラスチック部材の使用中止および重量削減に取り組んでおります。

物理的リスクである自然災害などが経営資源に損害を与え、業務の停止・機能低下をもたらす事象を想定し、検査の受託を止めないとの社会的使命を踏まえ、業務継続態勢を構築しています。

  • 水災害なども考慮した事業拠点の移転及び統廃合
  • 一定のインフラ停止を想定した発電機確保
  • 上下水の備蓄設備の確保

2019年6月開催のG20 大阪サミットにて、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減する 「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が各国首脳間で共有されました。これを受け、当社グループではプラスチック廃棄量全体の8割を占める株式会社エスアールエルをターゲットとし、その中でも大半を占めるセントラルラボラトリーの廃棄物課題に取り組んでいます。具体的にはリサイクル・カバー率の高い廃棄物処理業者を選定するとともに拠点内の分別を徹底しています。今後、当社の重要拠点へと活動を拡大していきます。

廃プラスチックのリサイクル促進

臨床検査薬事業の製品について、包装材におけるプラスチック部材の使用中止および重量削減、バイオマスプラスチックによる代替に取り組んでいます。

環境教育の実施

H.U.グループの環境活動やそれぞれの業務がどのように環境に影響を及ぼすかを周知するための教育を入社時に行っています。ISO認証対象事業所の環境マネジメントシステム推進責任者および推進担当者に対する実務知識習得のための専門教育の他、世の中の状況やH.U.グループ環境方針・活動などについても、グループ全社向けの教育を実施しています。

H.U.グループでは、環境経営に関する情報の積極的な開示や、ステークホルダーとの対話を通じて、ステークホルダーの皆様との双方向コミュニケーションに努めています。

2019年に初めて気候変動質問書に回答し、2021年から3年連続でA-(Aマイナス)の評価を得ています。また、2023年回答ではサプライチェーンに関する項目への回答からスコアリングを行うサプライヤー・エンゲージメント評価(SER: Supplier Engagement Ratings)で上位から2番目のスコアであるA-(Aマイナス)評価を得ています。
なお、2023年には水セキュリティ質問書に初めて回答し、D評価となりました。

気候変動イニシアティブ(JAPAN CLIMATE INITIATIVE)(※2)

当社は、脱炭素社会を実現するという日本政府の姿勢・方針を支持するとともに、気候変動イニシアティブ(JCI)の宣言「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」に賛同し、2020年4月より参加しています。また、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が推進する「Race to Zero」への参画を果たすため、2021年10月には「JCI Race To Zero Circle」にも加入しました。
上記に加えて、TCFDコンソーシアムや国連グローバル・コンパクトの「環境経営分科会」をはじめ、各種イニシアチブへの積極的な参加を通じて、今後もカーボンニュートラルや脱炭素等の地球環境に関する政策や規制に対する取り組みを強化して行きます。

当社は経団連・カーボンニュートラル行動計画を構成する日本製薬団体連合会の一員として、気候変動影響の低減計画を策定・推進するとともに、積極的に公共政策や規制への働きかけを行います。

<JCIメッセージへの賛同を通じた日本政府・公共政策への働きかけ>

業界団体への参画および見直しについては、当社の環境方針や事業活動等の考え方との整合性を考慮し、大きく矛盾・乖離していないかを定期的に確認し、その整合が困難な場合や乖離が大きいと判断した場合は脱退も検討します。

2021年11月にTCFD(※3)提言への賛同およびTCFDコンソーシアムへの参画を表明し、TCFDの推奨項目およびリスク/機会の対応状況について開示しています。

TCFD推奨開示項目 対応状況
ガバナンス

気候変動関連のリスクおよび機会に関わる組織のガバナンス

  • CEOを委員長としたH.U.グループ サステナビリティ委員会において、気候変動問題を審議し、CO2の削減目標、進捗管理を実施
  • 総務担当執行役兼総務本部長を責任者とする、環境・エネルギー部会での決定に基づき、気候変動施策を推進
戦略

ビジネス・戦略・財務計画に対する気候変動リスク・機会の実際のおよび潜在的影響

  • H.U.グループ サステナビリティ委員会を通じ、B2DSを踏まえたリスクと機会を特定し、影響を想定
リスク管理

気候関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス

  • H.U.グループ リスク管理委員会にて、気候変動の影響を含めた自然災害リスクについて最重要リスクとして定義
指標と目標

気候関連リスクおよび機会を評価・管理するために使用する指標と目標

  • パリ協定に基づいた、SBT認定水準の長期削減目標を設定
    CO2排出量 総量 … 2050年ネットゼロ
    中期目標[~2030年度]:
    Scope1-2
    Scope3
    37.8%削減(2021年度比)
    22.5%削減(2021年度比)

不確実性の高い気候変動の影響を捉えるため、シナリオ分析を行いリスクと機会を定性的に評価しています。 検討に際しては、移行リスクが大きくなる世界(1.5℃、2℃等)、物理的リスクが大きくなる世界(4℃等)について理解を深め発生し得る事象を整理しました。 各事象への備えとして、 「短期:1年」「中期:5年」「長期:10年」 の時間軸を設定し、事業への潜在的影響および対応事項を整理するとともに、事業リスクおよび機会について分析しました。

リスク/機会への対応

  • CDP:2000年に設立されたプロジェクト「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」が前身となった気候変動など環境分野に取り組む国際NGO。機関投資家が関心のある気候変動関連情報を収集、開示することに焦点を当てている。
  • JCI:日本における気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するためのネットワーク組織
  • TCFD:G20の要請を受け、金融安定理事会により、気候関連の情報開示および金融機関の対応を検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立された組織「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」

当社グループの事業活動は、森林、土壌、水、大気、生物資源など、自然資本から生み出される生態系サービスに依存して成り立っています。一方で、私たちの事業活動で生ずる環境負荷は、自然資本に少なからず影響を及ぼしています。
このため、生物多様性の維持・保全への貢献が当社グループにとって重要な課題であるとの認識のもと、生物多様性と当社グループの事業活動の関係について、「生物多様性関係性マップ」にとりまとめ、バリューチェーンにおける状況把握と理解に努めています。
当社グループでは、生物多様性への負の影響を低減させるとともに、正の影響を拡大するために自然資本全体を回復させてゆく「ネイチャー・ポジティブ(自然再興)」の実現に向けた活動を推進し、取り組んでいきます。

サステナビリティ推進体制のもと、生物多様性への取り組みについては、当社の総務本部長を責任者とする「環境・エネルギー部会」が計画を策定し実行しています。また、目標設定などの重要事項は、「H.U.グループ サステナビリティ委員会」で協議され、適宜、取締役会に報告されています。
(サステナビリティ推進体制については、こちらをご覧ください。)
(環境エネルギー部会の体制については、本ページ上部の「体制・責任者」をご覧ください。)

当社グループは、事業と生物多様性の関わりを把握するため、主要事業であるLTS事業とIVD事業における「生物多様性関係性マップ」を作成しました。「依存」または「影響」に与える主要項目として、水資源や気候変動が共通項目としてクローズアップされました。気候変動に加え、水資源への取り組みを行うことが生物多様性の保全につながると考え、水資源に焦点を当てて、リスク・機会を抽出しました。

リスク分類 リスクの内容 対応
物理的リスク 急性
慢性
  • 水不足・水質劣化によるラボラトリー・工場の操業制限、操業コストの増加など操業への影響
  • 水資源の有効利用
移行リスク 政策
法的責任
市場
技術
評判
  • 取水・排水等の水に関わる規制の強化・導入による規制対応コストの増加
  • 汚染水流出等による環境汚染の際の賠償責任の発生
  • 節水や水の循環利用促進につながる技術の導入や設備の利用によって生み出した製品・サービスに対する消費者の嗜好が高まる中、その対応の遅れと水への取り組み不足によるレピュテーションの低下、顧客からの買い控え、取引条件の悪化
  • 新規制への対応
  • 持続可能な水利用の取り組みの推進および情報開示
  • 新技術動向の把握と適切な時期の導入と利用
機会分類 機会の内容 対応
ビジネスパフォーマンスに関わる機会 市場
製品とサービス
資本フローと資金調達
資源効率
評判資本
  • 水資源保全の取り組みが資本市場で評価され、機関投資家の採用する関連指数への選定や、資金調達面での優遇による企業価値の向上
  • 水使用の効率化により資源不足のレジリエンスが向上
  • 水資源保全につながる技術の導入や設備の利用によって、製品・サービスの市場展開・売り上げ拡大、企業レピュテーションの向上
  • 持続可能な水利用の取り組みの推進および情報開示
  • 節水や水の再利用の推進

特定した水のリスクと機会および対策は、サステナビリティ推進体制のもと、「環境・エネルギー部会」が管理しており、適宜、見直しの予定です。また、財務および事業継続に大きな影響を及ぼす可能性のある項目は、リスク管理委員会に共有し、そのリスクを管理します。
(リスク情報については、こちらをご覧ください。)

事業への影響が大きいと想定される気候変動に加え、水について、重要課題と認識し、水資源の保護に向けて、今後、目標を設定し、取り組みを進めていきます。

当社グループの事業活動では、上水道や地下水の使用が不可欠なため、限られた自然資源の1つである水の使用量削減は、経営課題としても大変重要であることを認識しています。
とりわけ、世界各地で水資源の枯渇や水質の悪化、洪水災害の発生など、地球環境に深刻な影響を与えていることからも、当社グループでは環境領域のマテリアリティ「循環型社会」を形成する水資源の保護に向けて、水使用量の削減および排水処理や排水水質の適正管理に取り組んでいます。

主な事業 関連する主な水の使用目的
検査・関連サービス 試薬調整や希釈および分析機器の洗浄
臨床検査薬 試薬生産
ヘルスケア関連サービス 医療器具の洗浄

グループ各社では、それぞれの事業特性を踏まえた水使用の効率化を図り、水使用量の削減に取り組んでいます。当社グループは、2019年度以降において新型コロナウイルス感染症関連検査の増加等で水使用を伴う業務量の拡大影響を受けながらも、全体の水使用量の削減とともに、単位売上当たりの取水量(㎥/百万円)も減少しました。2022~2023年度では新ラボラトリーの稼働開始・移管等の影響がありましたが、引き続き一層の効率化を図り、水使用量の削減に取り組んでいきます。

環境・エネルギー領域のサステナビリティ・ロードマップ(3カ年目標)

国内外の生産拠点を対象に、世界資源研究所(WRI)発表のAQUEDUCTの(Overall Water Risk)に基づいた水リスクの把握を実施しており、「Extremely High」または「High」に該当する水ストレスのある地域で全ての拠点が操業していないことを確認しています。今後も水リスクが高い拠点が判明した場合は、水使用量の削減など、そのリスク内容や社会状況に応じて適切な対策を講じて行きます。

2014年7月の水循環基本法の施行に伴い環境省が発足した「ウォータープロジェクト」に、当社は参加しています。産官学民等の連携による良好な水環境の活用・保全の取り組みに賛同し、当社グループでの事業活動はもとより、従業員への意識啓発やプロジェクト参加企業との協働を推進して行きます。

Water Project