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中期経営計画

当社は、将来の飛躍的かつ持続的な成長に向けて、2021年3月期から2025年3月期までの5か年に係る中期経営計画「H.U. 2025 ~ Hiyaku (飛躍) & United ~」(以下、「本中期計画」)を2020年9月に策定いたしました。

本中期計画の詳細につきましては、下記の中期経営計画説明資料もご覧ください。

2021年7月16日セグメントの変更に関するお知らせに記載の通り、セグメントの変更等一部の内容を変更

2020年3月期を最終年度とする前中期経営計画『Transform! 2020』(以下、「前中期計画」)においては、受託臨床検査事業(CLT事業)および臨床検査薬事業(IVD事業)における顧客獲得の未達、CLT事業における固定費削減の遅延、セールスミックスの変化、想定を上回る価格下落影響等により数値目標は大幅な未達となりました。

一方、人事制度の統一やIT機能の集約などのグループ一体化施策の推進、CLT事業における市場シェア拡大およびR&Dの強化や新セントラルラボをはじめとする将来成長のための投資の実行等、2021年3月期以降の飛躍的かつ持続的な成長のための基盤を着実に構築してまいりました。この成長基盤を収益に結びつけていくことが継続的な課題であると認識しております。

当社グループを取り巻く事業環境は、高齢化や先端的医療の導入等による医療費の伸長が見込まれる中、医療機関の経営状況の悪化や医療費の削減要請に伴う検体検査実施料の抑制により、国内臨床検査市場は今後も厳しい状況が継続するものと見込まれます。一方、医療費の抑制策が進む中、病院および病床再編に伴う在宅医療や予防医療のニーズの拡大、先進医療技術の向上やIT技術の進展など新たな成長の機会があり、事業環境の様相は刻々と変化しております。

また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う生活者の行動変容や患者様の受診抑制等、足元の流動的な環境変化にも適切な対応が求められております。

一方、海外臨床検査市場においては、新興国を中心に成長しているものの先進国では社会保障費抑制による低成長が継続しております。また、各国の制度変更等による薬事関連コストが増加する等、厳しい事業環境が継続しております。

このような事業環境の中、当社は、前中期計画において推進してきた成長基盤の整備、組織と業務の変革を土台として、下記3点を本中期計画における重要テーマとして掲げグループ一丸となって推進してまいります。

  • 新セントラルラボの稼働
  • OEM事業の強化
  • ヘルスケア×ICT

当社グループは、LTS事業およびIVD事業を有する世界的にみても稀有なグループ企業であり、これらの事業に滅菌関連事業や在宅・福祉用具事業をはじめとする様々なヘルスケアに関連する事業の拡大・強化に取り組んでおり、幅広い事業展開を行っております。これらの事業活動により高付加価値または新しい価値を創出していくことが、当社グループの企業価値を向上させるものと考えております。

グループの有する無形資産を基にグループシナジーを最大限活用し、顧客提供価値の最大化を図ってまいります。

LTS事業およびIVD事業においては、検査の早期開発、開発評価、承認取得を、グループR&D機能も活用し一体となって進めることにより、新規臨床検査の早期実用化を実現してまいります。このLTS・IVD価値創造モデルは、今般のSARS-CoV-2抗原検査の早期実用化と収益への貢献により、あらためて実証されたと考えております。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、検査の重要性および当社グループが行うLTS事業が医療を支える社会インフラであるということも社会的に広く認識されたと自負しております。

今後は、中央材料室および手術室における滅菌サービスを提供する滅菌関連事業と合わせて、グループとしての総合提案を行っていくことで、顧客提供価値を最大化し、グループの企業価値を向上してまいります。

病院を中心とした医療機関へのグループ総合提案等により着実な成長を果たすとともに、先端領域の検査拡充、次世代プラットフォームの開発等、更なる成長のための施策に取り組んでまいります。

また、検査情報のデジタル化を推進するとともに、PHR(Personal Health Record)を含むICT(Information and Communication Technology)サービスツールを導入・推進することにより、事業を通じて得られる様々なデータの利活用と医療/健康情報プラットフォームの確立を目指し、ヘルスケア×ICT領域へと事業展開を進めてまいります。

地域医療や予防医療の一層の充実が求められる中、当社は、在宅事業やセルフメディケーション・健保事業等を新規育成事業として強化しており、これらのサービスとICTを融合させた新たなサービスを展開してまいります。

また、診療所向け業務支援SaaS(Software as a Service)と、生活者向けのPHRを当社グループで一体的に提供することで、医療の場における検査結果のさらなる活用をサポートし、LTS事業における開業医向けサービスの付加価値向上に取り組んでまいります。

本中期計画は、新型コロナウイルス感染症への対応および新セントラルラボ稼働に向けた構造改革を実行していくフェーズと、新セントラルラボの稼働後の投資の回収および収益拡大を果たす2つのフェーズに分かれます。

これを前提として、「新セントラルラボの安定稼働と自動化による原価低減」、「LTS事業における固定費削減および収益性改善」、「グループ一体化戦略の推進」および「IVD事業におけるOEM事業の拡大」を本中期計画における重要施策と定め、グループ一丸となって実行してまいります。

当社は、2022年1月の稼働開始を予定している新セントラルラボの安定稼働と自動化による原価低減を本中期計画における最重要施策と位置付けております。

新セントラルラボは、将来の事業環境においても高品質な検査サービスを継続して提供するために建設するものであり、一般検査においては全自動化による業務効率化と24時間稼働による大量処理が可能となり、また特殊検査においては最先端の検査項目に対応する設備・環境を整備し、AI技術やロボティクス等を導入することで、徹底した業務効率化とさらなる品質向上を追求いたします。

検査の自動化等により、2025年3月期には、2020年3月期と比較して、新セントラルラボ単体で一般検査では15%、特殊検査では7%の原価の低減を見込んでおります。

新セントラルラボの稼働を踏まえ、全国的なラボ再編を実施してまいります。具体的には、新セントラルラボに加え、2021年3月期に新福岡ラボ、2024年3月期には新関西ラボを開設することで3拠点体制を確立し、検査の集約化を図ってまいります。併せて、地域の医療需要を考慮し、顧客ニーズに対応したラボ体制を構築すべく、地域毎にSTAT(Short Turn Around Time)ラボを設置し、迅速検査への対応を強化してまいります。

また、外部とのアライアンス推進によるシェアリング・ロジスティクスの構築やグループ内の集荷機能および拠点の統合を進めることにより、集荷・物流に係るコストの最適化を図ってまいります。

これらの施策を通じて、高品質な検査を提供することに加え、コスト競争力の向上と検査結果報告の短縮化によりお客様に選ばれる検査会社となり、更なるシェア向上を果たしてまいります。

当社は、2020年9月に、株式会社エスアールエル、富士レビオ株式会社および日本ステリ株式会社の国内営業部門およびマーケティング部門を統合したH.U.フロンティア株式会社(以下、「H.U.フロンティア」)を設立し、2020年10月1日より営業を開始いたしました。

H.U.フロンティアは、当社グループがかねてより進めてきたグループシナジーの強化をより加速するために設立されたものであり、医療を取り巻く環境が急速に変化する中、当社グループがもつ臨床検査サービス、臨床検査薬の製造販売、医療器材の滅菌サービスなど幅広い事業をもって、顧客ニーズに応じて様々なサービスや総合的なソリューションを提供してまいります。

また、各社の顧客基盤を一元化することで、セグメント間のクロスセル拡大や既存顧客への拡販を強化するほか、各社がもつ高い技術力を活用し、最適な新サービスや製品の開発も行うことで、グループ一体での顧客提供価値の最大化を目指してまいります。

引き続き検査ラボや院内顧客に対するルミパルス製品の内販拡大を推進するとともに、原価率の高い検査試薬や使用量の多い試薬の開発を進めグループ内での内製化を推進し、LTS事業のコスト削減およびグループ全体でのキャッシュ・フロー改善に取り組んでまいります。

グループ内のR&D機能を統合し知の共有を図るとともに、グループ全体最適のR&D戦略を推進し、機動的な技術の導入・開発の加速を推進してまいります。

IVD事業における海外戦略は、ルミパルス製品の拡販を中心に取り組んでまいりましたが、後発のプレーヤーとしてグローバル大手企業と競争し収益を拡大していくことは非常に難しく、また、各国における規制等の変更により薬事関連のコストが増大しております。このような事業環境の中、海外ルミパルスに関しては、展開地域および項目に関する選択と集中を進めてまいります。一方、IVD事業の強みである免疫分野の良質な原材料・試薬開発技術および、LTS事業におけるルミパルス製品の採用実績をもとにした信頼性と評価を活用することで、OEM事業の強化・拡大に取り組んでまいります。

今後は、Fujirebio Diagnostics,Inc.(米国)、Fujirebio Europe N.V.(欧州)および富士レビオ・ダイアグノスティクス・ジャパン株式会社の3極体制によって、OEM事業を推進してまいります。

本中期計画において、売上高の着実な成長と利益率の追求のみならず、資本効率の向上と安定的なキャッシュ・フローの創出を果たすべく、下記のとおり経営数値目標を掲げております。

2025年3月期
売上高CAGR 6%以上
EBITDAマージン 18%以上
営業利益率 10%以上
ROE 12%以上
ROIC 8%以上

5か年(2020年3月期-2025年3月期)

5年間累計
営業キャッシュ・フロー 1,500億円以上
フリー・キャッシュ・フロー 500億円以上

LTS事業においては、収益性の改善を最重要課題として認識しており、「4)本中期計画における重要施策」に記載のとおり、新セントラルラボの安定稼働と自動化による原価低減、全国ラボ再編、集荷物流機能の合理化、営業統合によるグループ総合提案等の施策を通じて、収益構造を抜本的に改善してまいります。

さらに、先進医療技術の向上、地域包括ケアシステムの進展や医療におけるICTツールの重要性が高まる等、LTS事業を取り巻く環境は刻々と変化しており、LTS事業が環境変化に対応し飛躍的な成長を果たすべく、「商品力の強化」および「医療機関および生活者へのICTツールの導入」に関しても重要施策として掲げております。

特殊検査に強みを持つ臨床検査会社として、がんゲノム、血液疾患、感染症や希少疾患等、最先端かつ医療需要の大きい疾患分野の新規項目の導入を推進してまいります。また、将来的に需要が拡大することが予測される再生医療・細胞医療領域への進出を図ってまいります。
一方、収益性の面では、ルミパルス試薬の採用項目拡大、外注項目の内製化および不採算項目の整理等を通じて、コスト競争力を向上してまいります。

開業医、生活者の双方のニーズに合致したICTツールを提供してまいります。開業医には、これまで提供してきた検査結果システムに加え、業務支援システムを提供し、生活者には、個人のヘルスケア情報を一元管理できるPHRを提供してまいります。 当社グループが提供するICTツール間を連携させることで、開業医と生活者との間に新しい接点を創出する等、診療効率と患者様サービスの向上に資する新たな価値を創出してまいります。

2025年3月期
売上高CAGR 6%以上
EBITDAマージン 17%以上
営業利益率 9%以上

5か年(2020年3月期-2025年3月期)

「4)本中期計画における重要施策 4.IVD事業におけるOEM事業の拡大」に記載のとおり、IVD事業の強みを活かすとともに、生産体制の拡充と社内リソースの再配置等により、OEM事業の強化・拡大に取り組んでまいります。

国内事業については、H.U.フロンティアによるグループ総合提案および営業力強化、内外販におけるルミパルス試薬の項目拡販、LTS事業向けの項目内製化・導入推進および、マニュアル製品の選択と集中による固定費の最適化により、国内事業の成長と収益性の改善を図ってまいります。

海外ルミパルス事業については、地域の選択を行うとともに、独自性のあるアルツハイマー関連項目に注力してまいります。

また、新型コロナウイルス感染症により需要を再認識したエスプライン製品をはじめとするPOCT(Point Of Care Testing)を強化してまいります。具体的には、検体種別(唾液、鼻前庭、無痛採血等)の拡大や感染症項目のラインナップ強化等により商品力を強化していくほか、H.U.フロンティアによるLTS事業の顧客への販売を進めるとともに、生産キャパシティを拡充してまいります。
さらに、次世代プラットフォーム開発に関しても推進してまいります。

2025年3月期
売上高CAGR 4.5%以上
EBITDAマージン 25%以上
営業利益率 20%以上

5か年(2020年3月期-2025年3月期)

滅菌関連事業においては、病院の経営環境が厳しさを増す中、医療現場のニーズに応えるとともに、医療現場の効率化やコスト削減に資するサービスを積極的に提案してまいります。

重点施策としては、営業統合によるグループ総合提案、手術室を含めた全面受託化の深化および、継続的なオペレーションの改善により収益拡大を図ってまいります。また、労働集約型ビジネスであることを鑑み、人件費の最適化を図ってまいります。

2025年3月期
売上高CAGR 9%以上
EBITDAマージン 12%以上
営業利益率 9%以上

5か年(2020年3月期-2025年3月期)

引き続き、業績の改善を図るとともに、2021年3月期中に第3者からの資金調達(Private Placement)を実行し、その先の株式公開に向けて事業を推進してまいります。

三位一体モデル(健診クリニック、画像センター、検査ラボ)を引き続き推進していくことで、当初計画通り、2023年3月期の持分法投資損益の黒字化を目指してまいります。

本中期計画においては、安定的なキャッシュ・フローの創出と健全な財務規律の維持を重要なテーマとして掲げ、下記のとおり財務戦略を実行してまいります。

① キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善等による営業キャッシュ・フローの改善
② ファイナンスリースおよび不動産ファイナンスの活用
③ 不動産売却の推進

(リース債務を除く)純有利子負債
/EBITDA倍率(倍)
1.3倍以下
(本中計期間中2.5倍以下を維持する)
自己資本比率(%)
(不動産ファイナンスを除く)
40%以上

2025年3月期