「正しく知る」
新型コロナウイルス
感染症の検査

新型コロナウイルス感染症に対する検査はそれぞれに特徴があります。
正しい知識で適切な検査を行うための情報をご紹介します。

新型コロナウイルス感染症の検査の種類と特徴

新型コロナウイルス感染症に対しての検査は、大きく分けて、PCR検査などの核酸検出検査・抗原検査・抗体検査の3つがあります。

通常、医療機関で行われる検査は、検査センターまたは院内の検査室に運ばれて実施されます。また、臨床現場即時検査(POCT)である迅速抗原検査は特別な機器が不要で、15〜30分程度で判定可能です。現在では日本のみならず世界中で使用されています。ここではそれぞれの検査の違いや特徴、メリット、デメリットを紹介します。

検査の種類と違い

目的 現時点における感染の有無 i 感染の履歴
検査名
核酸検出
検査
PCR法・
LAMP法・TMA法
抗原検査 抗体検査
定量検査
高感度抗原
定量検査
定性検査
迅速抗原
定性検査
測定
対象
ウイルスの
RNA
i
ウイルスの
タンパク質
i
ヒトの
タンパク質

(ウイルスに対する抗体) i
使用
検体
唾液、鼻やのどのぬぐい液
唾液、鼻やのどのぬぐい液 i
血液
血液
実施
時間
1~4時間 30分 15〜30分

核酸検出検査の中でも最も普及しているのは「PCR検査」

ウイルスの遺伝子情報(RNA)を測定することで新型コロナウイルスを検出する方法です。 使用する検体は鼻やのどから採ったぬぐい液または唾液を用います。

■ PCR検査の特徴
  • ウイルス量が少なくても検出でき、臨床から無症状者スクリーニングまで広く利用されている検査方法
  • 多くの医療機関で検査を受けることが可能
  • 様々な試薬・手法が利用されており、性能が大きく異なる
  • ウイルスのRNAを増やして測定するため、コンタミネーション(他の検体の測定時の増幅物の影響)および阻害物質のリスクがあり、精度管理が重要

短時間で結果が出る「抗原検査」は、高感度、迅速の二種類がある

ウイルスのたんぱく質を測定する検査方法。高感度な抗原定量検査と迅速に検査可能な抗原定性検査の2種類があり、簡便かつ短時間で測定が可能です。抗原定性検査は、現状では唾液は利用できず、鼻やのどのぬぐい液で検査を行います。一部の抗原定量検査では、患者さん自身で採取可能な唾液が利用でき、医療従事者の負担を軽減させることも可能です。

■ 抗原定量検査の特徴
  • 30分程度と短時間で結果が判明
  • 簡易な核酸検出検査と同レベルの検出精度
  • 臨床から無症状者スクリーニングまで利用可能
  • 専用機器を用いることで、全自動・大量処理が可能
  • 一般の検査室で利用されている専用機器を利用可能
  • 非特異的な反応の場合もあり再検査が必要となるケースがある
■ 抗原定性検査の特徴
  • 15分~30分程度と短時間で結果が判明
  • 特別な機器が不要であり、その場で結果が確認できる
  • 感染拡大地域など幅広く検査が必要な場合に有効
  • ウイルス量が一定以上でないと偽陰性(感染しているのに陰性と判定される)になる可能性がある
  • 周囲に感染を広げるリスクがある人は、十分なウイルス量を有するため、検出可能
  • 無症状者の確定診断として用いることは推奨されない

「抗体検査」は、過去の新型コロナウイルス感染歴を調べる検査

血液を調べることで、過去に新型コロナウイルスに感染していたかどうかを調べる検査。 新型コロナウイルス感染後にウイルスを排除しようとする反応として体内で作られる「抗体」と呼ばれるたんぱく質を調べます。抗体は体内で作られるのに時間がかかるので、今感染しているかどうかを調べることはできません。

■ 抗体検査の特徴
  • 血液を調べることで、過去に新型コロナウイルスに感染していたかどうかを調べる検査(感染後1~3週間以降)
  • 現在感染しているかどうかを調べることはできない
  • 陰性でも過去に感染していないとは言い切れない
  • ワクチン接種後数週間で検査値が上昇することが期待される
  • ワクチン接種後に上昇しない場合がある。また上昇しなかった場合に、ワクチンの効果がないとは言い切れない

新型コロナウイルス感染症の検査の種類と適した使用シーン

検査によって特徴が異なることから、シーンによって行う検査が異なります。
適切なシーンに合わせて検査を行うことが重要です。

■ 使用シーンに応じた検査の種類例

SCENE.1
  • 発熱などの症状が発生し、医療機関を受診し、新型コロナウイルス感染症の疑いがあるとされた

核酸検出検査
抗原定量検査
抗原定性検査(症状が出てから9日以内)

SCENE.2
  • 新型コロナウイルス感染症患者の周りにいる濃厚接触者(無症状者を含む)の感染を確認する
  • 医療施設等でクラスターが発生、陽性者を調べる必要がある

核酸検出検査
抗原定量検査
抗原定性検査

SCENE.3
  • リスクが高い施設において、有症状者に対して、迅速に検査を実施する

抗原定性検査

SCENE.4
  • 限られた環境・作業者で、新型コロナウイルスに感染していないか迅速かつ高感度に検査する

抗原定量検査

SCENE.5
  • 海外出張の前に陰性証明が必要

核酸検出検査
(国によっては)抗原定量検査・抗原定性検査

SCENE.6
  • 過去に感染したかどうかを確認する
  • ワクチン接種により抗体価が上昇しているかを確認する

抗体検査

H.U.グループの新型コロナウイルス感染症への取り組み

①検査精度の追求

医療機関からの検査の受託においては、臨床検査に50年以上携わってきた当社グループのこれまでの経験を活かし、高い品質基準に基づいた検査を実施しております。更に、安定的な検査の提供が重要と考えており、現在までに数多くのSARS-CoV-2の検査試薬について厳しい評価を行い、性能および供給体制に問題のない試薬を選定し、日々の検査を実施しています。また、随時、検査結果をモニタリングすることで、日々の検査精度に問題がないことを確認しています。

また、抗原定性検査試薬・抗原定量検査試薬を世界に先駆けて開発し、医療現場に安定的に提供してまいりました。 抗原定性検査試薬は第三者が行った研究でも他社製品と比較して性能が劣らないことが示されているだけではなく、他の抗原検査薬との比較においてトップレベルの検出感度を示しています。

②国内の検査体制の強化

当社グループ企業は、国内の民間検査企業として初めて新型コロナウイルス検査の受託を開始しました。現在に至るまでまさに365日体制で、PCR検査などの核酸検出検査、抗原検査、抗体検査等、ほぼ全ての検査に対する受託体制を日本全国で整えています。
PCR検査と抗原定量検査においては、それぞれの検査を合わせて、全国で約3万件以上/日の検査受託キャパシティを確保しています。

PCR/高感度抗原定量検査 全国検査体制
(八王子ラボを中心に全国検査体制を整備)

また、抗原定量検査試薬は、多様なニーズに適した異なる処理数を有する自動システムをご利用いただくことが可能となっており、検査のニーズに応じて大学病院、検査センター、空港検疫などで設置・利用されております。国内空港では8ヵ所の空港で合計50台の抗原定量検査装置が稼働しております。

空港検疫所における検査風景

③変異株への対応と研究

■ 確実な検査に向けて

SARS-CoV-2ウイルスはウイルスの特性上、自らの遺伝子を変化させていくこと(変異)が予想されておりました。現在のようにウイルスの増殖や免疫に影響を与える変異株が出現する前から、検査結果に影響を与えうる変異が報告されており、当社では解析やモニタリングを実施し、生じている変異が受託検査および製造している抗原試薬の検査結果に影響しないかなど日々確認してまいりました。

■ 顕在化した危機への対応

2020年12月頃より、ウイルスの特性に影響を与える複数の変異株が報告されております。当社では、変異株を見分けるためのPCR・配列解析技術を導入し、変異株による感染が市中でどれだけ拡大しているかを把握することにも貢献してまいりました。
また同変異に対しての抗原検査の反応性の確認、および反応性に影響を与える変異が出現していないかモニタリングしています。実際に、現在生じている変異に対する反応性に影響はなく、空港検疫においても海外から持ち込まれる変異株を検出し、感染者の方々の早期の隔離に貢献しております。

■ 今後の危機に備えて

新たな変異株は、今後も継続的に発生することが予想されることから、変異のモニタリングと検査技術の改良が大変重要と考えております。当社では、独自の研究開発を継続し、H.U.グループで提供するPCR検査および抗原検査については、新たな変異株も常に検出することができるように日々確認・改良を加えて参ります。

④社会貢献活動

当社グループ企業は、新型コロナウイルスの迅速抗原検査キット「エスプライン®SARS-CoV-2」を2020年9月にネパールに、2021年5月にパキスタンに寄付しました。また、同年7月には、大学等の教育機関において感染拡大防止に同キットを活用いただく目的で、同キットを文部科学省に無償提供しました。
H.U.グループは、上記のような取り組みを通じても、グループ一丸となって新型コロナウイルス感染症の拡大防止に取り組んでいます。

新型コロナウイルス感染症検査のQ&A

A

PCR検査に代表される核酸検出法は、高感度な検査方法です。ただし、試薬ごとの性能差も大きいことが報告されており、測定施設ごとの性能差が大きくなる検査です。また治癒後においても、感染能を有していないウイルスを検出してしまう場合が報告されております。
抗原検査には、高感度な抗原定量検査と簡便かつ迅速な抗原定性検査の2種類があります。抗原定量検査は、感染能が低いことが多いウイルス量が少ない場合を除き、PCR検査と同等の検出精度があり、30分程度と短時間で結果が得られます。また全自動測定機器を用いることで大量の逐次処理が出来るため、短時間で多くの検査とその結果報告が必要な空港検疫や患者数の多い医療機関などで活用されております。
抗原定性検査は、特殊な手技や機器を必要としない場合が多く、15~30分程度でその場で結果が得られる検査で、臨床検査の専門家が少ないクリニック、一刻を争う救急医療の現場、さらに感染拡大地域の医療機関、高齢者施設では症状のない人を検査する際にも役立ちます。
どちらの検査においても、感染初期においては、検出するのに十分量のウイルスが増えていないため、偽陰性(本当は陽性なのに陰性として判定されてしまう)になることが考えられます。そのため、疑わしい場合は、頻度高く検査を実施することが必要です。その作業性の手軽さから、頻度高い検査に向いている抗原検査を用いることで、感染初期を見逃すリスクの低減も可能であると考えられます。
それぞれ特徴が異なることから、シーンごとに最適な検査が用いられます。

A

感染していても、ウイルス量が十分でない場合や検体採取が適切に実施されなかった場合など検出できない場合があります。特に唾液検査は、喫煙、飲食やマウスウオッシュで影響をうけると考えられ、検体採取前の30分間は、喫煙、飲食、歯磨きなどは避けていただく必要があります。またPCR検査では様々な検査結果に影響を及ぼす物質が知られており、それによってウイルスが検出できなくなることが問題となる場合もあります。

A

H.U.グループが提供している検査は、PCRおよび抗原検査(抗原定性検査、抗原定量検査)、抗体検査がございます。
PCR検査は、販売されている試薬によって、検査の性能が大きく異なることが報告されています。我々は、その中から、実検体を用いて十分な性能を発揮する試薬を選択し、利用しております。また、日々の検査の精度管理も徹底しております。
抗原定性検査は、多くの第三者評価によって評価されており、その性能の高さが評価されています。また、他の同様の検査方法と比べてもその検出力はトップレベルを誇ります。 抗原定量検査は抗原定性検査の性能をさらに高めた製品です。臨床研究においても、PCRと同程度の性能を有していることが示されております。さらに、唾液検査に用いることが可能な唯一の体外診断用医薬品として承認された抗原検査です。

A

PCR検査では、変異が入りにくい遺伝子を測定しており、現在問題となっている変異株に対しても検出可能です。また、本検査へ影響を与える変異が生じていないかも、日々確認を実施しております。
抗原検査においても、現在変異が問題となっているウイルスが細胞に感染する際に重要なスパイクタンパク質ではなく、変異の少ないヌクレオカプシドタンパク質を検出する臨床検査薬であり、同タンパク質の異なる領域に結合する抗体を複数用いております。また感染拡大している、懸念される変異株のヌクレオカプシドタンパク質に反応することを確認しております。工夫した設計となっておりますが、日々変異の動向を確認し、新たな注目すべき変異が生じた場合には、検証を行い、反応性を確認する対応を行っております。